代々木駅から明治通りへ向かう途中、雑居ビルのすき間にひっそりとあった「お食事処・喫茶 かんな」。
常連のあいだでは“おばちゃんの店”として知られていた、小さくて、でも忘れられない食堂です。
残念ながら閉店してしまいましたが、せっかくなので思い出をコラムとして残しておきます。
入りづらいのに、なぜか落ち着く店
かんなの入口は、昭和の喫茶店らしい重い木製の扉。
初見の人ならほぼ100%入りづらいと感じるはず。中の様子も外からは見えず、いまどき珍しい“勇気がいる扉”でした。
でも、その扉を開けると空気が一変するんです。
カウンターには少し腰の曲がったおじいちゃん。
ホールには、小さくて気さくなおばあちゃん。
二人でゆっくり切り盛りする、どこか懐かしい空気の喫茶店でした。
名物カツカレー。うまい…けど、それより量がすごい
かんなで食べるものといえば、ほぼ全員一致で「カツカレー」。
というか、正直言うとそれ以外を食べたことがありません。
味は素朴で、クセがないのにあとを引くカレー。
カツは揚げたてで衣が軽くて、スプーンでも切れるくらいの柔らかさ。
でも、“かんなのカツカレー”を語るときに最初に出てくるのは味より量。
- 丼のように盛られるライス
- その上に溢れんばかりのカレー
- さらにどーんと乗るカツ
食後はいつも「夜ご飯いらないな…」と心の中でつぶやくほどの満足感。
サラリーマンの胃袋に真っ向勝負をしかけてくる、そんな“昭和の大盛り”がそこにありました。
気さくなじいちゃん・ばあちゃんの店だった
入りづらい店構えとは裏腹に、二人の人柄はとにかく温かい。
「相変わらずすげー量だな!」と言うと、おばあちゃんは嬉しそうに笑ってくれて、
おじいちゃんは奥の厨房から「がんばって食べてね」と軽く声をかけてくれる。
ああいう温度の店って、もう本当に少なくなりましたよね。
閉店の知らせ。もっと行っとけばよかったなぁ
ある日いつものように店の前を通ると、貼り紙がありました。
「長らくありがとうございました」
その一言だけ。とてもシンプルで、でもどこか寂しい文字。
年齢のことを考えれば自然なことだけど、「最後に行っておけばよかったな」と少し胸が痛くなりました。
閉店してしまったお店ほど、急に恋しくなるものですね。
あのカツカレー、また食べたくなってきたな…。
かんなの存在は、ただの“昼飯”じゃなかった
代々木の食堂は今でも多いけど、かんなのように時間がゆっくり流れる店はもう出てこないでしょう。
昭和の匂いと、おじいちゃん・おばあちゃんの優しい空気。
味というより「場所の記憶」が残っている、そんな店でした。
昼飯はただの飯じゃなくて、その日の気持ちや体調まで変えてくれるもの。
腰痛サラリーマンだった僕にとって、かんなは“ちょっとした避難場所”だったのかもしれません。
閉店しても、思い出はずっと残ります。
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